スピンオフWEB小説「ネクロス国の死霊魔術」―死霊魔術と5体目のメイドドール【第一話】

カテゴリ: その他

 皆さまどうもこんにちは!突然ですが、シナリオ関係でお世話になっている「株式会社共幻社」さんと共同でウチのオリジナルタイトル「ネクロス国の死霊魔術」のスピンオフWEB小説を始めることになりました!!

 

 死霊魔術を扱う種族が集まった”ネクロス国”を舞台とした、女王「アンジェリカ」とその家臣「レイミ」。今回は侯爵より、メイドドール4体を納品するよう依頼を受けますが…なんと、そこにあるはずもない5体目のメイドドールが!アンジェリカとレイミ、そしてメイドドールたちが織り成すドタバタ劇をお楽しみください。

 

 毎週金曜日ころに公開し、エピローグを含めると全10話程度となっております。ちなみに「株式会社共幻社」さんとはこれから様々なコンテンツを一緒に制作していく予定です。それでは第一話、はじまりはじまり~。

 

⇒目次はコチラ!

 


第一話  イカ好きの女王様

 

ネクロス。

それは、クロニア大陸の端に位置する小国である。
彼の国の経済は、秘術によって魂を吹き込まれた人形──ドールを輸出することで成り立っている。

 

 

──さあ、今日もまた、ドールの注文が舞い込んできたようだ。

 

「レイミー! レイミ、レイミはおらんか!」

 

玉座の間に、女王アンジェリカの声が響き渡る。
童女としか思えない見た目ではあるが、女王は御年583歳。
醸し出される貫禄には、六世紀をまたいで生きる威厳がたしかに含まれていた。

 

「……おや? いつもならこのへんで、玉座の間の調度品をやたらめったらに破壊し尽くしながらヘッドスライディング気味に現れるのだが」

 

アンジェリカが、側近の名を繰り返す。

 

「レイミ! レイミレイミレイミ! レイミレイミレイミレイミレイミレイミレイ! ……ミレイ?」

 

しかし、玉座の間には沈黙が横たわるのみだった。

 

「まあよいわ。この女王アンジェリカ御自らが、レイミを探しに足を運ぶとしよう。まったく、仕方のないやつ──」

 

アンジェリカが不承不承に腰を上げ、玉座の間から出ようとしたときのことだ。

 

「──ん? 修繕したばかりの伝説の勇者の鎧がバラバラになっておる……」

 

伝説の勇者の鎧と題された装飾品は、あからさまに偽物だ。
だが、見た目がカッコいいので、アンジェリカはこの鎧を玉座の間に飾るほど気に入っていた。

 

「腕の悪い職人め。二度と仕事を回さんからな」

 

ぶつぶつと呟きながら、小山と化した鎧のいちばん上にあった兜を拾い上げる。
すると、そこには、

 

「──わああッ! レイミ!?」

 

鎧に押し潰されるようにして気絶している側近・レイミの姿があった。

 

「ネクロス国殺人事件!? 私の推理によると、犯人は全身黒タイツ! レイミ見ていろ私が犯人を取っ捕まえて縛り首に──」

「──う、うーん……」

「あ、生きておったか」

「生きてますよう……」

 

鎧の下から這い出したレイミが、よろよろと立ち上がる。

 

「私としては、何をどうしたらこうなるのか、気になって仕方がないのだが……」

「ええと──」

 

人差し指を頬に当てながら、レイミが言葉を探す。

 

「私、おそうじをしようと思ったんです」

「ドールにまかせればいいとは思うが、殊勝な心がけではあるな」

「そしたら、こうなったんです」

「──…………」

 

アンジェリカが頭を抱える。

 

「……これが他の家臣なら説明不足を叱責するところだが、レイミの場合はそのままだから困る……」

「えへへ」

「褒めとらんわッ!」

「ひ~」

 

アンジェリカが佇まいを直し、改めて口を開く。

 

「まあよい。さっそくだが、仕事の話に移るぞ」

「仕事ですか?」

「我がネクロス国における収入の大部分は、ドールの輸出が担っておる」

「はい」

「だが、ドールを作り出す死霊魔術は習得が極めて難しく、我が国の死霊術師たちは常にオーバーワーク。猫の手も借りたい状況なのだ」

 

レイミが、ぽんと両手を合わせる。

 

「あ、ちょうどいいです!」

「何が」

「猫なら、このあいだ子連れの野良猫が裏庭で鳴いてたので、餌付けしておいたんですよー」

「──…………」

「?」

 

レイミが笑顔で小首をかしげる。

 

「いいから辞書でも引いてこいッ!」

「ひ~!」

 

アンジェリカが溜め息をひとつつく。

 

「……いいか、レイミ。お前は、国家死霊術師としては新米のぺーぺーだが、私が手ずから育てた秘蔵っ子だ。今は無理でも、いつかは必ず、他の死霊術師たちを主導せねばならん」

 

アンジェリカが、鷹揚な笑みを浮かべる。

 

「私も、頑張ってお前を育て上げねばな」

「がんばってください、女王!」

「お、ま、え、も、頑張るんだ、ドアホウッ!」

「ひ~」

「まったく、向上心があるんだかないんだか……」

「ありますよう」

「……いつか私が倒れたとき、皆をまとめられる者がいなければ、この国の明日はなくなる。国民たちは露頭に迷うだろう」

「──…………」

「そうならないために、後継ぎが必要なのだ。わかってくれるか?」

 

レイミが、真剣な表情で頷く。

 

「──はい! 不肖レイミ、がんばります!」

「よろしい」

 

アンジェリカが、ようやっと満足げな笑みを浮かべ、懐からあるものを取り出す。

 

「では、この依頼の委細始終をレイミにまかせることにしよう」

 

それは、一通の手紙だった。

 

「差出人は、アポロニアの公爵。気難しいことで有名な人物だ」

「気難しいんですか……」

「やつが若い時分に一度だけ会ったことがあるのだが、とにかく曲がったことが嫌いで、融通がきかず、頭が固い。道理が通らねば、自国の国王にすら無遠慮にズバズバ言うような男だよ」

「命知らずなんですね……」

「それでも重用されているのだから、有能は有能なのだろうな」

「それで、どんな依頼なんですか?」

「知らん」

 

アンジェリカが、あっけらかんと言う。

 

「私もまだ開けていないからな」

「えー! い、いちおう目くらいは通していただきたく……」

「だーめ。今回は、お前の判断力を試す意図もある。ドールを安売りするわけには行かん。どちらにせよ、イレギュラーな依頼なのだ。納期と報酬が釣り合わなければ、断って構わない」

「──…………」

「とにかく、重責の中で何らかの答えを出せ。座学は実践に勝らない。決してな」

「……女王」

 

俯きがちだったレイミが、しっかりと顔を上げて、アンジェリカの双眸を見つめる。

 

「ごほうび、ありますか!」

「──…………」

「──…………」

「はあ……」

 

根負けしたように、アンジェリカがひとつ溜め息をつく。

 

「仕方ない。今回の依頼で発生した純益の10%を、お前にやることにしよう。小遣いとしては破格だ」

「わあ!」

「今のうちから金の使い方も学んでおけ。自国内で使うぶんには、経済が回る。浪費が目に余るようなら、没収するがな」

「えー……」

「ノブレス・オブリージュ。上に立つ者は、誰より我慢が上手くなければいかん」

 

そう得意げに言って、アンジェリカが玉座の間の外を指し示す。

 

「──さ、早く仕事にかかれ。私は、数日ばかり留守にする。城のことは頼んだぞ」

「あれ、どこ行くんですか?」

 

アンジェリカの視線が、明後日の方向をさまよう。

 

「……まあ、どこだっていいじゃないか」

「そんなわけにいきませんよ。いざというとき、女王と連絡が取れなければ困りますわ」

「──…………」

 

しばしの沈黙ののち、

 

「……ラフロウ」

 

アンジェリカが、観念したようにそう呟いた。

 

「ラフロウって、ヴァロニアの先にある港町ですよね」

「まあ、うん……」

「──あっ」

 

レイミが気づく。

 

「そういえば、今朝の新聞で、ラフロウにダイオウイカが打ち上げられたって。女王、イカ見たさに公務を──」

「さーて旅支度は済んでるし馬車は呼びつけてあるしさっさと行ってさっさと帰ってこようかなー! 公務公務、忙しいなー!」

 

白々しく言葉を紡ぎながら、アンジェリカが早足で玉座の間を後にする。

 

「はあ……」

 

残されたレイミが、小さく溜め息をついた。

「女王のイカ好きにも困ったなあ」

 

そうは言いつつも、レイミはアンジェリカの奇行を悪くは思っていない。
むしろ、微笑ましいとすら感じていた。

 

「……がんばろ。上手くいったら、喜んでくれるかな」

 

レイミが、ドールの錬成室へと歩き出す。
やる気を示すかのように、その口元を綻ばせながら。

 

  第二話≫

 

☆☆☆次回へ続く☆☆☆
来週金曜日の公開予定、お楽しみに!

 

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シナリオ制作「株式会社共幻社」のご紹介

 編集プロダクションとして書籍の編集校正・シナリオ作成などを請け負うほか、出版社としては電子書籍の発行、小説コンテストの開催といった企画を継続して行っています。『創作をもっとおもしろく』をモットーに、クリエイターの皆さまと連携しながら、より魅力的なコンテンツを作り出したいと考えています。

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