スピンオフWEB小説「ネクロス国の死霊魔術」―死霊魔術と5体目のメイドドール【第三話】

カテゴリ: その他

 すいません、1日遅れました~。毎週金曜日に配信!シナリオ関係でお世話になっている「株式会社共幻社」さんと共同ではじめました「ネクロス国の死霊魔術」のスピンオフWEB小説の第三話!

 

<本編の概要>

 死霊魔術を扱う種族が集まった”ネクロス国”を舞台とした、女王「アンジェリカ」とその家臣「レイミ」。今回は侯爵より、メイドドール4体を納品するよう依頼を受けますが…なんと、そこにあるはずもない5体目のメイドドールが!アンジェリカとレイミ、そしてメイドドールたちが織り成すドタバタ劇をお楽しみください。

 

⇒目次はコチラ!

 


第三話  女王様が女王様の使いに

 

 女王アンジェリカと側近レイミを乗せた馬車が、街道を駆けていく。

 

「ええい、もう少し速度は出んのか!」

 

 御者が、慌て気味に答える。

 

「す、すみません女王さま! これ以上は、馬が潰れてしまいます……」

「……よい。ラフロウへ行く際、お忍びだからと言って、普通の馬車を使った私も悪いのだ」

「うち、魔法馬車ひとつしかないですもんねえ」

 

 緊張感のない声音で、レイミがそう口を挟んだ。魔法馬車とは、魔力で編み上げた魔法馬で客車を牽引する馬車のことである。魔法”馬”という名ではあるが、必ずしも馬の形状とは限らない。ネクロス国の魔法馬は車輪であり、動力源が魔力であることを除けば、十九世紀前後の自動車とよく似ていた。

 

「事が露見する前に回収できればと思ったが、手違いがあったと素直に謝るべきかもしれんな」

「……怒られませんかね?」

「なあに、一国の女王がわざわざ足を運ぶのだ。公爵とて文句は言わせん」

「そのことなんですけど……」

「うん?」

「女王がアポロニアに足を運ぶのって、本当なら、とてもとても重大なことですよね」

「そうなるな」

「ネクロスの女王がわざわざドールを回収しに来たとなれば、国中のうわさになるのでは……」

「──…………」

 

 アンジェリカの表情が、みるみる曇っていく。

 

「……やば」

「やばいですよね……」

「し、仕方ない。御者よ、アポロニアに入る前に、適当な街で停めてくれい」

「了解です、女王さま」

「えと、どうするんですか?」

「変装する」

「へんそう……」

「変装して、女王の使いということにする」

 

 アンジェリカが、得意げに人差し指を立てる。

 

「幸い、ネクロスとアポロニアは同盟国だ。身分の証明は最低限で構わん。王家の紋章の刻まれた馬車なら、フリーパスのようなものだしな」

「な、なるほど! 女王、あったまいいです!」

「はっはっは、褒めるな褒めるな。年の功というやつだ」

 

 変装を済ませたふたりを乗せた馬車は、国境を越え、公爵の屋敷を目指す。公爵の領地は、幸いにも、国境からそう離れてはいない。アポロニアに入ってから僅か数時間で、馬車は、公爵の屋敷へと辿り着いた。

 

「こ、ここが公爵のお屋敷ですか……」

「──…………」

「塀、高いですね……」

「──…………」

「門、立派ですね……」

「──…………」

「うちのお城より──」

「言うな……」

 

 溜め息ひとつつき、アンジェリカがドアノッカーを鳴らす。

 ──カン、カン、カン!

 

「ネクロス国、アンジェリカ女王の使いで参りました! 公爵と謁見したく存じます!」

「ます!」

 

 しばしして、正門が開いていく。

 そこから顔を出したのは、剪定バサミを持った好々爺だった。

 

「アンジェリカ女王の──使い、かね」

「はい!」

 

 レイミが、元気よく頷く。

 

「おじいさんは、庭師の方ですか?」

 

 老人は、面食らったような表情を浮かべたあと、

 

「──ああ、そうだよ。とにかく入りなさい」

 

 そう言って、人好きのする笑みを浮かべた。

 

「──…………」

「──……」

 

 アンジェリカと老人の視線が交錯する。

 

「……ありがとうございます」

 

 様々な思惑の入り混じった声でそう言うと、アンジェリカはスカートの端をつまんで一礼した。庭師の案内を受け、ふたりが門をくぐる。

 

「──わあ!」

 

 レイミが歓喜の声を上げる。ふたりの目に飛び込んできたものは、几帳面なまでに手入れされた見事な庭園だった。

 

「このお庭、ぜんぶおじいさんがお世話してるんですか?」

「ああ、そうだよ。この庭は、わしの生きがいでね。喜んでもらえると、とても嬉しいよ」

「ええ、とても素敵な庭園だと思いますわ」

 

 猫をかぶったアンジェリカが、上品にそう告げる。

 

「──それで、用事というのは、昨日届いたメイドドールのことかね」

「はい。公爵が注文なされたメイドドールは四体。しかし、こちらの手違いで、もう一体余計に送ってしまったのです」

「なるほど。それは、難儀したろうね」

 

 庭師が深々と頷く。

 

「幸い、公爵は留守でいらっしゃる。好きなドールを持ち帰るとよかろう」

「──いえ、その」

「?」

 

 要領を得ないレイミの態度に、庭師が疑問符を浮かべる。

 

「その一体というのか、なんと言いましょうか、非常に個性的と言いますか……」

「ありていに言って、失敗作なのです」

「わー! わー!」

「隠しても仕方あるまいに」

「ですけど、もっと柔らかい言い方がですね」

「ふむ……」

 

 渋い表情を浮かべる庭師に対し、アンジェリカが提案する。

 

「もしよろしければ、メイドドールたちを一ヶ所に集めてはいただけませんか? 見た目が同じとは言え、中身はぽんこつ。すぐに判別できるはずですので」

「ああ、わかった。広間に集めさせよう」

 

 庭師が鷹揚に頷く。

 アンジェリカとレイミは、庭師の先導で、屋敷の大広間へと通された。

 

≪第二話 第四話≫

 

☆☆☆次回へ続く☆☆☆
来週金曜日の公開予定、お楽しみに!

 

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 編集プロダクションとして書籍の編集校正・シナリオ作成などを請け負うほか、出版社としては電子書籍の発行、小説コンテストの開催といった企画を継続して行っています。『創作をもっとおもしろく』をモットーに、クリエイターの皆さまと連携しながら、より魅力的なコンテンツを作り出したいと考えています。

 

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