スピンオフWEB小説「ネクロス国の死霊魔術」―死霊魔術と5体目のメイドドール【第四話】

カテゴリ: その他

 すんません、またまた1日遅れました~。毎週金曜日に配信!シナリオ関係でお世話になっている「株式会社共幻社」さんと共同ではじめました「ネクロス国の死霊魔術」のスピンオフWEB小説の第四話を公開いたします。

 

<本編の概要>

 死霊魔術を扱う種族が集まった”ネクロス国”を舞台とした、女王「アンジェリカ」とその家臣「レイミ」。今回は侯爵より、メイドドール4体を納品するよう依頼を受けますが…なんと、そこにあるはずもない5体目のメイドドールが!アンジェリカとレイミ、そしてメイドドールたちが織り成すドタバタ劇をお楽しみください。

 

⇒目次はコチラ!

 


第四話  ”ぽんこつ”じゃないもん

 

 

 公爵の屋敷の大広間に、五体のメイドドールが集められた。アンジェリカが声を張り上げる。

 

「──今から、いくつか質問をする。右から順に答えるんだ」

 

 メイドドールたちが一斉に頷いた。

 

「この中に、本来メイドドールではない者が混じっておる。それは、貴様か?」

「──…………」

 

 右端のドールが、首を横に振る。

 

「では、貴様か」

 

 次のドールが、また首を横に振る。結局、すべてのドールがこの質問に”いいえ”の意を示した。

 

「……ぬう」

「あ、アンジェ──アンジーさん! こんなこともあろうかと……」

 

 レイミが、鞄から白く輝く果実を取り出した。

 

「じゃーん!」

「そ、それは、白銀のリンゴ!」

 

 白銀のリンゴ。

 それは、魔力を豊富に含んだネクロス特産の果実である。人間が食べてもただのリンゴに過ぎないが、魔力で錬成されたドールにとっては非常に魅力的なものに映るらしい。

 

「なるほど、それがあれば──」

 

 そこまで言って、アンジェリカは首をかしげた。

 

「……どうなるのだ?」

 

 レイミが得意げに解説を始める。

 

「メイドドールは、その役割上、自制心がしっかりと機能しています。ですが──」

 

 ぽい!

 

 レイミが、五体のドールの前に白銀のリンゴを放り投げた。

 

「!」

 

 ぱくり。

 真ん中にいたメイドドールが、反射的にリンゴにかぶりつく。

 

「貴様がぽんこつか!」

「……ぽんこつじゃないもん!」

 

 そう言い残し、ぽんこつドールは屋敷の奥へと駆け出した。

 

「しまった!」

「追いかけましょう!」

「……いや、駄目だ。公爵のお屋敷を、勝手に荒らすわけにはいかん」

「でも!」

「──では、こうしましょう」

 

 事を静観していた庭師が、口を開いた。

 

「メイドドールたちよ。あのドールを捕まえてきなさい」

「「「「はい!」」」」

 

 庭師の命に従い、メイドドールたちがぽんこつドールを追いかけていく。

 

 十分後──

 

「……どうして、五人仲良く戻ってくるのだ?」

 

 メイドドールたちが、順に答える。

 

「その」

「手分けして追いかけてたら」

「いつのまにか、五人になってて……」

 

 アンジェリカが地団駄を踏む。

 

「ああもう、厄介な!」

「見た目がみんな同じだから、まぎれちゃったんですねえ……」

「次だ、次!」

「策があるんですか、アンジーさん」

「フッフッフ。すべてのメイドドールには、あの機能が備わっておる」

「……もしかして、あれですか?」

 

 レイミが苦笑を浮かべる。

 

「私、あればかりは、アンジーさんの感性を疑ってしまうんですけど……」

「えー、可愛いじゃないか。もえもえきゅん」

「可愛いですけどー」

「では、右から順に!」

 

 アンジェリカが、右端のドールを指差した。

 

「もえ、もえ、きゅん!」

 

 可愛らしいしぐさで、メイドドールがポーズを決める。

 

「Oh……」

 

 アンジェリカが親指を立てる。

 

「ぐっ!」

「ぐっ!」

 

 メイドドールが、サムズアップを返す。

 

「アンジーさんのメイド像って、絶対メイドカフェのそれだと思うんですよね……」

「では、次!」

 

 二番目のメイドドールが、ポーズを決める。

 

「もえ、もえ、きゅん!」

「はい次!」

「もえ、もえ、きゅん!」

「次!」

「……ほえ、ほえ、ふにゅん」

「──…………」

 

 しばしの沈黙ののち、

 

「お前だーッ!」

「わ!」

「捕まえろ、メイドドールたちよ!」

「「「「いえっさー!」」」」

 

 ぽんこつドールを捕まえようと、四体と一体がもみくちゃになる。

 

「「「「「捕まえました!」」」」」

「──…………」

「──…………」

 

 アンジェリカとレイミが顔を見合わせ、

 

「……それで、結局どれがぽんこつなのだ?」

 

 互いが互いの腕を掴み、足を掴み、ほっぺたを引っ張り合って、誰が誰を捕まえたのかわからない有り様である。アンジェリカは、ひとつ溜め息をついた。

 

「ぽんこつのわりに頭が回るというか、ずる賢いというか、手がかかるというか。……やはり、ドールは製作者に似るのだな」

「そんな、私がずる賢くて手がかかるみたいじゃないですかあ」

「わかっているなら、何も言わん」

「えー」

「ともあれ、今はぽんこつを特定せねば……」

 

 それから小一時間ほど、アンジェリカとレイミは、思いつく限りあらゆる手を尽くした。

 だが、ぽんこつドールが一枚上手。いつしか、日が暮れ始めていた。

 

「──そろそろ公爵が帰ってこられる。持ち帰るなら、早くして頂きたい」

 

 庭師が、苛立たしげにそう言った。

 

「す、すみません……」

「……仕方がない」

 

 アンジェリカが、渋い顔で言葉を継ぐ。

 

「全員を連れ帰り、処分しよう。何をしでかすかわからないぽんこつが混じるより、納期に遅れたほうが、幾分かましというものだ」

 

 ──ざわ、と。
 その場に戦慄が走った。

 

「そ、そんなあ! いくらなんでも、かわいそうですよう……」

 

 見た目が同じドールでも、幾許かの個性はある。
 その反応は、様々だった。
 青ざめる者。
 うつむく者。
 無反応な者。
 天を仰ぐ者。
 そして──

 

 一歩、前に出る者。

 

「……ぼくです」

「えっ」

「ぼくが、ぽんこつです。だから──だから、みんなを処分しないで……!」

「──……!」

 

 庭師が、目を見張る。
 アンジェリカは、慈愛のこもった視線をぽんこつドールへと向けた。

 

「同時期に作られたドールは、姉妹のようなもの。お前は、姉妹思いなのだな」

「──…………」

 

 ぽんこつドールは、答えない。

 

「庭師殿」

「……はい」

「たいへんお手間を取らせました。この通り、正規のメイドドールを四体、納入いたします」

「わかりました。お気をつけてお帰りください」

「お気遣い、ありがとうございます」

 

 アンジェリカが、スカートの端をつまんで一礼する。

 

「──さあ、ふたりとも。帰るぞ」

「はい!」

「──…………」

 

 ぽんこつドールが、四体のメイドドールに手を振る。

 

「ばいばい」

 

 一体のメイドドールが、ぽんこつドールに手を伸ばし──別のドールに、優しく遮られた。

 メイドドールたちの瞳には、皆、寂しさが宿っているように思われた。アンジェリカは、それに気づいている。だが、その足を止めることは、決してない。

 

「行こ」

 

 レイミが、ぽんこつドールの手を取る。

 

「……はい」

 

 こうして、ふたりと一体は、公爵の屋敷を後にしたのだった。

 

 

≪第三話 第五話≫

 

☆☆☆次回へ続く☆☆☆
来週金曜日の公開予定、お楽しみに!

 

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 編集プロダクションとして書籍の編集校正・シナリオ作成などを請け負うほか、出版社としては電子書籍の発行、小説コンテストの開催といった企画を継続して行っています。『創作をもっとおもしろく』をモットーに、クリエイターの皆さまと連携しながら、より魅力的なコンテンツを作り出したいと考えています。

 

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