スピンオフWEB小説「ネクロス国の死霊魔術」―死霊魔術と5体目のメイドドール【第五話】

カテゴリ: その他

 皆さまどうも!こんにちは!毎週金曜日に配信、シナリオ関係でお世話になっている「株式会社共幻社」さんと共同ではじめました「ネクロス国の死霊魔術」のスピンオフWEB小説の第五話を配信いたします!

 

<本編の概要>

 死霊魔術を扱う種族が集まった”ネクロス国”を舞台とした、女王「アンジェリカ」とその家臣「レイミ」。今回は侯爵より、メイドドール4体を納品するよう依頼を受けますが…なんと、そこにあるはずもない5体目のメイドドールが!アンジェリカとレイミ、そしてメイドドールたちが織り成すドタバタ劇をお楽しみください。

 

⇒目次はコチラ!

 


第五話  魔狼の群れ

 

 

 帰途の車中、アンジェリカは上機嫌だった。

 

「いやー、よかったよかった! 一時はどうなることかと思ったが、さすが私だ!」

「ほんと、危なかったですねえ」

「よし、時刻も時刻だ。せっかく変装しているのだし、夕飯はここらで食べていこう。美味い海鮮料理を出す店を知っておるのだ」

「また、イカですか?」

「おうともさ」

「あんまりイカばかり食べてると、イカになっちゃいますよー?」

「望むところだ!」

「望むところなんだ……」

 

 レイミが、呆れたように苦笑した。

 

「ぽんこつよ、貴様も好きなものを注文するといい。オススメはイカ飯だぞ」

 

 ぽんこつドールが、小さく呟く。

 

「さいごのばんさん……」

「いや、最初の晩餐だ。貴様を処分するつもりはない」

「……?」

 

 ぽんこつドールが顔を上げ、アンジェリカを見やった。

 

「そもそも、他のメイドドールたちを処分する気もなかったですよね」

「うむ」

「えー!」

 

 ぽんこつドールが、客車の中で立ち上がる。

 

「ずるいー!」

「はっはっは、大人はずるいものよ」

 

 アンジェリカが、満足げに笑いながら言葉を継ぐ。

 

「それに、貴様には見どころがある。私たちを騙すずる賢さに、他のメイドドールを翻弄する身体能力。メイドの適正こそないが、十分お役立ちだぞ」

「うんうん」

 

 レイミが頷くと、メイドドールは照れたように笑みを浮かべた。

 

「へへー……」

「城に帰ったら、さっそく、職業適性を調べてみよう」

「わかった!」

 

 ぐー……。

 そのとき、唐突に、低い音が馬車内に鳴り響いた。

 

「あ」

「……レイミよ。昼食を食べる余裕がなかったとは言え」

「私じゃありませんー!」

「隠さずともよい」

「違いますー!」

「ぼくでもないよ?」

「むろん、私でもない」

 

 御者が、小さく手を上げる。

 

「……すみません、私です」

「ほらー!」

「御者よ。レイミのために嘘などつかなくともよいのだぞ」

「信じてくださいよう!」

「あはは!」

 

 一同は、郊外の食堂で騒がしい夕食をとったあと、帰国の途についた。

 馬車が国境近くへと差し掛かったのは、日がとっぷり暮れたあとのことだった。

 

「──とまあ、お前の製作者も、とんだぽんこつでな」

「女王、ひどいですよう……」

「はっはっは、愛ゆえよ、愛──む?」

 

 アンジェリカが眉をひそめる。

 

「御者よ、速度が落ちてはいないか?」

「は、はい……。ほら、どうどう。どうしたんだ、お前たち」

 

 御者が、馬の尻を撫でる。

 

「どうかしたんですか?」

「ええ、馬が急に怯えだして──」

 

 アンジェリカが客車から身を乗り出し、道の先を睨む。

 

「──千里眼」

 

 そう呟いた瞬間、アンジェリカの右目に小さな魔法陣が浮かび上がった。

 

「女王、何か見えますか?」

「……魔獣だ。馬車が襲われておる」

「国境の警備隊は?」

「気づいておらんようだ。恐らく、襲われて道を逸れたのだろうな。幹道を大きく外れておる」

「……魔獣の内訳は」

「魔狼の群れだ。見る限り、十頭以上。それと──」

 

 アンジェリカが、苦々しく続ける。

 

「フェンリル級が、一頭いる」

「フェンリル級!?」

 

 レイミが、思わず姿勢を正す。

 

「そんな、軍を率いて討伐するやつじゃないですか!」

「ふぇんりるきゅう……?」

 

 ぽんこつドールが小首をかしげた。

 アンジェリカが答える。

 

「魔狼の中でも特別大きな個体だ。二階建ての家と同じくらいの体高と言えば、だいたい想像がつくだろう」

「ひ」

「い、急いで国境に向かいましょう! 警備隊から連絡して、国軍の一個小隊くらい出してもらわないと!」

 

 ぽんこつドールが、心配そうに口を開く。

 

「でも、馬車がおそわれてるって……」

「そ、それは……」

「それと、もうひとつ」

 

 アンジェリカの視線が、ぽんこつドールに向けられる。

 

「──襲われているのは、公爵の魔法馬車だ」

「!」

「ごしゅじんさまの……!」

「ぽんこつよ。お前が決めていい」

「……?」

「なんの準備も整っていない今、フェンリル級を討つことは難しい。だが、公爵を助け、共に逃げることくらいはできるだろう」

「でも、それは──」

 

 レイミの言葉を遮って、アンジェリカが続ける。

 

「当然、危険が伴う。だから、私は迷っているのだ。危険と断じて警備隊の元へ向かい、ネクロスへと避難するか。危険を賭して公爵に恩を売るか」

 

 アンジェリカが、問う。

 

「ぽんこつよ。お前は、どうしたい?」

 

 ぽんこつドールには、いささかの迷いもなかった。

 

「──たすけたい!」

 

 アンジェリカが、にやりと口角を上げる。

 

「よく言った」

「女王……」

「すまんな、レイミ。お前の主は、こういう女なのだ」

「……はあ」

 

 溜め息をひとつつき、レイミが口を開く。

 

「知ってます。だから、私がいないとダメなんです」

「策はあるか、レイミ」

 

 レイミの目が、鋭く細められる。

 

「いちおうは。危険は最小に留めますが、それでも万全ではありません。女王は、御身を大切にしてくださいね」

「わかっておるよ」

「さくせんって、どんなの?」

「要は、魔法馬車なんかより、美味しそうなもので釣ればいいのですわ」

 

 レイミが、微笑んで言った。

 

「──ね、御者さん」

「……はい?」

 

 御者の背中を、嫌な汗が伝う。

 こうして、公爵救出作戦の幕が切って落とされるのだった。

 

 

≪第四話 第六話≫

 

☆☆☆次回へ続く☆☆☆
来週金曜日の公開予定、お楽しみに!

 

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 編集プロダクションとして書籍の編集校正・シナリオ作成などを請け負うほか、出版社としては電子書籍の発行、小説コンテストの開催といった企画を継続して行っています。『創作をもっとおもしろく』をモットーに、クリエイターの皆さまと連携しながら、より魅力的なコンテンツを作り出したいと考えています。

 

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